29歳、崖っぷち

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そんな中で、私が目の敵にしている男がいる。 篠田明(シノダアキラ)25歳。 彼は入社3年目だが、かなり仕事のできる男で、まだ一応私が上司にあたるが、近々抜かされるのではと思っている。 しかもこの男、モテる。 背がすらっと高く、整った顔立ちに、清潔で知的な印象。 かなりの人数が彼を狙っているか、少なくとも憧れを抱いているらしい。 私にも一応プライドがある。 後輩なんかに抜かされまいと必死なのだ。 「篠田くん、昨日の件だけど進んでる?」 「はい、今日には企画案を提出できます」 昨日の夕方頼んで、期限は5日与えたのにたった1日で? 本当にムカつく男だ。なんでも卒なくこなしやがって。 「そう、やっぱり篠田くんは仕事が早いね。でも、もっとゆっくり考えても平気だよ」 私は少しいらつきを抑えて、平静を保ちながら言った。 「いえ、大丈夫ですから。今日中には終わります。」 彼はニコッと軽く笑って、視線をパソコンに戻した。 こういうのがムカつく。 完璧主義っぽいところも、こんな無理そうなことを言いながらも、絶対その通りやり遂げるところも。 ただの嫉妬だと言われたらそれまでだけれども。
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