契約恋愛のススメ

29歳、崖っぷち

私達は料理を食べながら様々な話をした。

新人さん……改め直子ちゃんの話を主に聞いた。

出身は東京で、5歳上の兄がシスコンで困っているだとか、最近飼い始めたトイプードルの"まろ"が可愛すぎるだとかいう話をしていた。

まろの写真をいつも持ち歩いて溺愛しているようだった。

写真を見せてもらうと、クリーム色の小さなトイプードルが、舌を少し出して首を傾げてこっちを見ていた。

なかなか可愛い。

ふと、子供の頃捨て犬を拾ったことを思い出した。

クッキーと名付けたその犬は、拾った頃にはすでに体が弱っていて、拾って一週間も経たないうちに死んでしまった。

それ以来、うちでは生き物を飼わなくなった。

「梶先輩は、お付き合いしてる方いらっしゃるんですか?」

直子ちゃんは突如話題を変更してきた。