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――それは、俺が小さくて、同じくまみ姉も小さかった頃だ……
『よう一馬!今から隣りのクラスのやつらと空き地でサッカーやるんだけどさ、お前も来るよな!一馬が来れば絶対勝てるよ!』
あの日は…確か、まみ姉の誕生日の日だったっけ………
『ああ!絶対行……』
『一馬~!』
『お姉ちゃん……ぁ』
『一緒に帰ろっ!ねっ?』
『あ、うん…そうだったね…』
『お、おい…!サッカーは!?』
『ごめん…また今度』
『はあ!?今日は大事な勝負なんだよ!なあ、頼むよ…なあ?』
『えと……その、ごめん今日は…。でも…今度なら……』
『お前いつもそればっかじゃねぇか!もういい…お前とは絶交だ…もうサッカー…誘わないから……!』
『あ――!ま、待って…!』
『行っちゃった……』
『ごめんなさい………私のせいで』
『謝ったってもう遅いよッ…!!』
『ふぇ…!………ぐす……ごめん…なさい……怒らないで……うぅ』
『……………………』
『お願い……なんでも……ヒク…っ…言うこと…聞くから』
『……じゃあ、ずっと僕と遊び相手になってよ…』
『え…?』
『今、言うことなんでも聞くって言ったじゃん!学校終わってもお姉ちゃんいつも一人で家にいるしいいでしょ!僕…友達あんまりいないし……』
『それって…ずっと一緒にいるってこと…?』
『うん、もちろん。や…約束だからな!』
あの時、小1の俺はまみ姉の悲しむ顔を見たくなくて、とっさにそう言って小指を涙ぐんだまみ姉に突き出したんだ。
『うん、約束……』
でも、その約束に後悔はしていない。
『――ありがとう。一馬…』
唯一親しい友人を失って落ち込んだ俺はまみ姉の笑顔に確かに救われた気がしたのだから…
まみ姉と小指を絡めた瞬間、俺の中のまみ姉の存在がもっと大きくなった――
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