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放課後。
「サヨーナラー」
「気をつけて帰れよぉ」
「先生も寄り道しちゃダメだよ」
「へいへい。あっ優太ちょっと待って。話があるんだ」
児童たちはそれぞれ家に向かう。最後に残ったのは浅村と優太だけ。
「先生。話ってなんですか?」
浅村は呼び止めておきながら正直迷っていた。
昶の言ってることがもし本当なら今年やっと教師になったばかりの自分に対処できる問題なのかどうか。
このまま見過ごすことも今ならできるだろう。
「先生?どうしたの?」
だが、優太のあどけない顔を見るとすぐに決心がついた。それに昶との約束もある。
「優太。ちょっと腹見せて」
「え?」
「いいから」
優太は戸惑いながらも服の裾をめくってくれた。
「マジでか……」
予想通り…いや…予想をはるかに超えた現実がそこにはあった。
どんだけ殴ればこれだけの痣ができんだよ…。
「先生?」
「この痣…どうしたんだ?」
「ぼくがわがままを言ったからママがおこったの」
「ママに殴られたのか?」
「ううん。ママはぼくが悪い子だからおこっただけだよ?」
優太の無邪気な顔が余計に悲しかった。
今までどうして気づけなかったんだ。
「とりあえず、お母さんと話した方が良さそうだな」
その前にするべきことがある。
浅村はポケットから用意してきたデジカメを取り出した。
「優太。そこに立ってくれるか…そうそこ」
「なんで写真とるの?」
優太はいきなりカメラを向けられて困ったようだったが素直に従ってくれた。
「優太のお母さんと話すときに使うんだよ」
浅村の言った意味がわからなかったのかまだ不思議そうな顔をしていたがふーんと聞き流した。
何枚か写真をとった後で服を着た優太に聞いてみた。
「なぁ。優太はお母さん好きか?」
「うん!大好き。だってぼくのママだもん!じゃあ先生さようならぁ!」
ブンブンと手をふって優太が教室を走っていった。
「明日は気合い入れてかないとな…」
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