Ⅵ     

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「優太―。瀬戸口優太―。……あれ?優太休みか?」 朝のホームルームで出席をとっていた浅村が顔をあげた。 「えー。優太休みのかよ―。せっかくおもしろいもん持ってきてやったのに」 直人がぶーと口を尖らせて言う。 「ほぉ。おもしろいもんとは何かな?直人君。学校に関係ないものは持ってきちゃいけないって先生言ったよなぁ」 「いや、そのえと」 浅村がずいっと直人の前にてを差し出した。 それで観念したのか直人はしぶしぶ浅村の手に何かを落とした。 「うぉっ!」 手のひらに乗ったその黒い物体を見て思わず声が出てしまった。 「わーい!先生ひっかかってるー!」 直人が床に落ちたゴキブリのおもちゃの触角を掴んでプラーンとつまみ上げる。 「直人ぉ。俺を怒らせたな。よーし直人だけ今日の宿題プリント一枚追加~♪」 取り上げたおもちゃをプラプラしながら教室を出た。 「そんな~!」 と直人の悲痛な声が廊下に響いてくる。 「先生」 ん?と振り返るとそこには不安そうな昶が立っていた。
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