Ⅰ       

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住宅街から少しはずれた古いアパート。 黒髪の少年がランドセルから鍵を取り出してノブを回す。 「ただいま」 靴を綺麗に揃えてはじっこに並べて家にはいる。 玄関には女物の靴が散らばっているが男ものは一つしかない。 この家には少年とその母親しかいないからだ。 机の上に広げた算数のノートに一年二組 瀬戸口 優太という名前が綺麗な字で書かれている。 瀬戸口優太とはこの少年の名前。 誰にでも優しい心の太い人になれという願いが込められている。 優太はその願い通りとても優しい子で勉強もできた。 母親は瀬戸口由紀。 保険会社の社員をしている。
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