Ⅱ    

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「はいッじゃあ今日の体育は障害物競争やるぞー!コースはいつもと同じだ」体操服に着替えた子供たちの前で担任の浅村 凌一先生がグラウンドを指差した。 「わーい♪」 「えー。やだぁ」 男子からは歓声が女子からはブーイングの嵐が巻き起こるのを浅村先生がまぁまぁとおさめる。 「頑張ったやつは今日は宿題なしにしてやる!」 「よし!早くやろうぜ!」 「ほんとに?じゃああたしも頑張る」 「私も」 宿題なしの誘惑に完全に釣られた子供たちががぜんやる気だしてスタート位置につく。 「いくぞ?よーい…ドンッ!」 浅村先生の合図でいっせいに走り出した。 まずは一本橋。 ここで落ちたらまた列の一番後ろに並ばなきゃいけないので皆慎重に渡っていく。 「みんな速いなぁ!」 優太は真ん中より少し後ろで男子のなかでは最下位だった。 優太はようやく鉄棒にたどり着いた。 ここでは逆上がりか前回りを二回することになっている。 「よし!」 優太は逆上がりが大好きだった。 鉄棒を回ると世界も回るのが楽しいのだ。 気合いを入れて助走をつけてグルンと一回転。 再び地面に降りてもう一回。 走り出す頃には男子を何人か抜いていた。 目の前を走るのは昶だ。 「優太、頑張ろう!」 「うん!昶もがんばれ!」 二人で並んででこぼこした丘を半分だけ埋め込まれたタイヤを避けながら上る。 あともう少しで丘を降りるその直前で優太の足が木の根っこに躓いた。 そのままズサァと派手に転ぶ。 「優太!大丈夫?」 昶の手につかまって立ち上がると膝から血が出ていた。 昶がポンポンと体操服についた土を払ってくれた。 「怪我したの膝だけ?」 「うん」 他に怪我してないか見ていた昶の目が優太の袖がめくれた腕に止まった。 「これ……?」 一つだけだったら転んだときにぶつけたのだろうと思うが痣はいくつもあった。 これは転んだだけでできるものじゃない。
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