Ⅱ    

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いつだったかテレビの特集で親から意味もなく殴られて死んでしまった子供の生前の写真を見た。 その子の腕にもこんなふうに痣がいっぱいあった。 昶の頭にある言葉が浮かぶ。 虐待…。 「昨日わがままを言ったからおこられちゃったんだ」 昶の視線に気づいた優太が笑って言った。 「優太……これ虐待だよ…これはやっちゃいけないことなんだ。先生に言おう?」 「何で?ママは悪くないよ?だってぼくが悪い子だからママがおこっただけだもん」 「おーい。優太ぁ、大丈夫かぁ?」 浅村先生がゴール地点で手をふっている。 「膝から血が出ちゃったけど大丈夫でーす」 あどけない声で返事をする優太は立ち上がって走り出した。 昶もそのあとを追いかける。 キーンコーンカーンコーン。 「今日はここまで。優太後でちゃんと傷口洗っとけよ。んじゃ日直号令」 「きょうつけ…れい」 昶が号令をかけみんな一目散に給食のある教室に猛ダッシュで駆け戻る。 今日のメニューはカレーだ。 「ちょっ優太!傷洗ってけって!」 「…先生」 「あれ?昶まだいたのか。早くしないとカレーなくなるぞ」 「あの…」 ただならぬ気配を感じた浅村先生の顔が真剣になった。
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