どうして俺が…

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「虹河さんは自分のことを散々に言っていましたがそんなことないです!!わざわざする必要が無いのに稲智君のために練習する友達想いなところだったり、私が作った料理を『おいしい、ありがとう』と毎回言ってくれる優しさだったり虹河さんの素敵なところはまだまだたくさんあります!!」 なぜだろうか、柚葉の言葉を聞く度に胸が熱くなる それに連鎖して目頭が熱くなる 目頭が熱くなると涙が流れ、流れ落ちた涙は焼け石に水の如く胸を更に熱くする そして遂には嗚咽するほどまで涙を流していた 父さんに『男は他人に涙を見せるな』と教育されてきたがそんなことを意識する余裕は俺には無かった 「私の日常は日本に来てから大きく変わりました。心配しないでください。もちろん、いい意味でです。」 柚葉の言葉を聞き、一瞬ビクッと反応した俺を察してか、柚葉は補足した そしてまた言葉を続けた 「アメリカにいるときはお父さんもお母さんも仕事が忙しくて1人で家にいることが多くて寂しかったんです。 でもそれが日本に来た途端に隣には必ず虹河さんがいてくれて毎日がとても楽しくて寂しかった日々が嘘のようでした。 こんな生活ができるのも虹河さんのおかげなんです。 虹河さんがいつも私を支えてくれるから、虹河さんが笑顔にさせてくれるから…。 もう私の生活は虹河さん無しじゃ成り立たないんです!! だから…いつまでも私のそばにいてくれませんか!?」 俺が柚葉の生活にそんなに役に立っていたとは知らなかった 正直凄く嬉しい、お世辞だとしても嬉しい 柚葉のために何もしてあげられない自分に負い目を感じていたから役に立っていたと思えるだけで十分だ やっぱり柚葉は凄いな、時には厳しく叱りながらも最後にはこうやって温かく包み込んでくれる 自分を見失いそうだった俺を助けてくれたある種の命の恩人だ そんな柚葉に俺がしてあげられることは1つ、これだけで恩を返しきれるとは思わないが柚葉がもういいと感じるそのときまで隣で支え続けよう これが俺が柚葉にしてあげられる唯一のことだ
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