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気持ちが1度落ち着くと、心には理性という名の鍵がかかり、さっきまでは意識の範疇から逸脱していた『他人に涙を見せるな』という父さんの教えが俺の脳に働きかける
そのため柚葉には悪いが、もうしばらくの間このまま俺の胸に顔を埋めていてもらうことにした
勝手に泣いておいてその上、涙を見せたくないからという理由で好きでもない男に抱きついたままでいてくれなんてお願いするのは自分勝手で我が儘なことだとは重々承知していたが、柚葉はそんなことを別段気にする様子もなく俺に身を委ねてくれた
「柚葉ありがとな。おかげで気持ちが凄く楽になったよ。柚葉の本音も聞けて嬉しかった。でも柚葉さ、俺も同じだよ。柚葉がいてくれるから毎日楽しく暮らせるし笑顔でいられる。感謝しても感謝しきれない、ほんとにありがとう。」
「へへへっ、虹河さんのためになってるのならばほんとに嬉しいです♪」
柚葉は俺の胸から顔を離し俺の顔を見上げる
反則だろ…上目遣いにこの満面の笑顔、しかも朱く染まった頬のおまけ付き
可愛すぎる…可愛すぎるぞぉ!!もうさっきまで悩んでいた自分がどうでもよくなってきた
それにしてもなぜ気づかなかったのだろう…俺にとって柚葉の存在がこれほどまで大きくなっていたとは…
知らず知らずのうちに俺の中で柚葉は同居人から大切な人へと替わっていたんだ
どう大切なのかは今の俺にはよくわからないが父親のように柚葉にはどこにも行ってほしくない気もするし母親のように柚葉を温かく見守りたい気もする
でもそんな気持ちを抱くのは柚葉の真の父親と母親である亜樹斗さんや美果さんだ
だから俺は柚葉に大切な人ができるまで守り続ける、そんな兄のような立場でいたいと思う
まあどっちかと言えば頼りないので弟なのかもしれないが…
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