Date3:下校デート

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海幸がトイレに立った隙に携帯を開く。 「いいところに来たねぇ。水に関するものは」 オレンジジュースだ。 「さて、これから先の手順だけど」 普通にデートしていることを装いながら、今回取り戻す身体の一部を決める。 「ちゃんとわかってるみたいだね。じゃあ、また後で」 メールを読み終えたと同時に海幸が戻ってきた。 「ごめんね、待たせちゃった?」 首を横に振る。どんなときでも、こちらを気遣ってくれる優しい笑顔。この笑顔を見ていると判断が鈍りそうになる。 海幸は俺の思いに気付くはずもなく、大好物の一つであるてりやきバーガーにかじり付いていた。ソースが口元につくのを気にして、小さく口に入れる様子がかわいい。 ブルブルブルと携帯が振動する。こんなときに。 「携帯、鳴ってるよ?」 大丈夫、気にしないでという意味の笑顔を作る。こんな状態で画面が開けるわけがない。海幸は嬉しそうにポテトをつまんだ。 「んふふ~彼女優先ってことか」 良いように解釈してくれたようだ。それよりもどこの部位にするかを考えないと。奴から指定された部位は全部で13パーツ。右脚、左脚、右腕、左腕、胴体、顔、口、鼻、両眼、両耳、脳、両胸、陰部。 このうち、今回はどこを選ぶか。 持ち運びやすさで考えると、口、鼻、眼、耳などだけど……。 海幸の小鳥を連想する小さな口が開く。 「どうしたの?食べないの?」 食欲はなかったが、楽しい時間を続けるためにも何か食べないと。 ホットコーヒーを一口すすり、ポテトを口に運ぶ。どちらも砂みたいな味がして美味しくなかった。 美味しいはずがない。常に考えているのは、海幸のどこの部位を切り取るか、ということ。海幸の耳をつんざくような悲鳴の中、俺は海幸を無理矢理抑えつけ、手に持った刃物を振りかざす。 再びの携帯の振動で我に返ると、海幸が心配そうな顔をしてこちらを見ていた。 「大丈夫?調子悪いなら帰ろうか?」 手を振って立ち上がり、俺はトイレへと向かった。 個室にはいると同時に携帯を開く。 「決めたかい?」 決められるわけがない。 「頭で考えちゃだめさ。直感で決めるんだ」 そういう問題じゃない……。俺は今、とんでもないことをしようとしてるんじゃないのか? 「何を悩んでるんだ。やるんだ」 だけど、これは――。 「いいから、やれ。やらないと」 わかってるよ!やんなきゃいけないんだ。
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