Date3:下校デート

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いよいよ今日の終わりが近付いてきた。今回の目的は、もちろん、会話を楽しむためでも、ジャンクフードを食べるわけでも、互いの秘密を打ち明けることでもない。今日の目的は――。 トイレから出ると、海幸はぼんやりと窓の外を眺めていた。一人でいるときのその横顔は、いつもと違ってどこか大人びていた、が。 「海幸。鼻に何かついてるぞ」 近付いて海幸の鼻についたゴミを取る。慎重に食べていたはずのハンバーガーのパンくずだった。海幸は恥ずかしそうに笑った。この笑顔が、このままずっと続けばいいのに。 携帯がまた振動する。 「そうか」 海幸が疑問を投げかける。 「いや、なんでもない」 これが合図だった。その瞬間、俺は何をするべきかを直感で理解することができた。 海幸を気絶させるまでは簡単だった。人気の少ない路地裏へ誘導し、用意していた鈍器で殴る。問題はここからだった。 「やれ」「やれ」「やれ」と奴からの催促メールが不協和音のように頭の中で鳴り響く。しかし、俺は小型ナイフを持ちながら立ちすくんでしまっていた。 のどはカラカラで全身から嫌な汗が溢れ出し、ひどい頭痛と吐き気で気を失わないだけで精一杯だった。良心が全力で俺を押しとどめ、それに抗おうとする意志とせめぎ合っている。 自分で自分の行動が把握できない。どちらを選んでも待っているものは暗闇しかないような気がして怖くて動くことができない。 こんな状態になるのは、生まれて初めてだった。 極度の混乱の中で、本当に気を失いかけたその瞬間。マナーモードにしたはずの携帯が大音量で鳴り響いた。 携帯がポケットから飛び出し、目の前で自動的に開く。 「わかっているな。お前のせいで海幸は死んだんだ」 ボタンが自動的に押されムービーが流れる。車だ。軽自動車が猛スピードで海沿いの坂道を下っていく。 「やめろ」 車内がアップで映され、運転席には俺が、助手席には海幸が乗っている。 「やめてくれ」 そして車は急カーブにさしかかるが、曲がりきれずにガードレールに衝突。そして――。 「やめろ!!」 携帯を掴み、地面へと投げ捨てる。携帯は壊れ、そのまま動かなくなった。 すぐに地面に横たわっている海幸の前に跪く。 「やるしかない。やるしかないんだ」 俺は右手に持ったナイフに力を込めると、喚きながらそれを実行した。 顔の中心部から大量の血が吹き出した。
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