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泳ぐことに興味なんてない、ウォータースライダーは乗りたくない、水着は見たいけどずっと見てられない。
だから、ここにいるワケはただ一つ――。
「私、あまり泳ぐの上手じゃないんだ~」
着替えが終わり合流したところで、いきなり海幸は言い出した。
「む。海幸なのに泳げないのかよ、とか思ったんでしょ」
いや、思ってない、と右手を振る。そのままプールに入ろうとすると、海幸がちょこんと俺の手をつかんだ。後ろを振り向くと、恥ずかしそうにこちらを上目遣いで見つめる姿があった。
「ねぇ、泳ぎ教えて」
うなずくと、海幸の左腕を引っ張ってプールへと入る。
「ひゃ、冷たい!」
この暑さだからこの冷たさが気持ちいい。が、海幸はなんだか水を怖がるかのように辺りを窺っているように見えた。
俺の不思議そうな視線に気づいたのか、「泳げないから水が怖いの」と弁明する海幸。
手取り足取り教えてやらないとダメか。
海幸の手を引いて、基本的な所からレッスンを開始する。
「こう?」
そんな感じ。海幸の両腕を支えながら、ばた足で前に進む練習。続いて、ビート板だけで前に進む練習。腕の曲げ方の練習。脚と腕を組み合わせる練習。息継ぎの練習。
と、そこまで進めてから一時休憩を取るためプールサイドへ。
「私、泳げるようになったよ!」
子どものようにはしゃぐ海幸。あれだけ動いてよく疲れないもんだと感心する。
「ね、あそこで休も!」
イスが30くらい並んでいて、簡単な軽食が取れるようになっている所のようだ。
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