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いよいよ今日の結末だ。今回の目的は、山を愛でるわけでも、キャンプファイヤーを取り囲むわけでも、バーベキューを楽しむわけでもない。そう、今日の目的は――。
「海幸」
テントの中で気持ちよさそうに眠っている海幸に声をかける。
うーん、と言いながらのそのそと体ごと俺の方に向けた。
「海幸、かわいいよ」
眠いながらもちょっと照れたはにかみ笑顔。胸の奥から熱いものが広がってゆく。
「海幸」
寝ぼけ眼をこする海幸。昼食のバーベキューを食べ終わり、すでに30分くらいが経っていた。
「海幸、これ見てくれる?」
後片付けは俺の担当。食器やら網やら全て洗った。
訝しそうな表情の海幸。
「海幸、右腕貸して」
何のためらいもなく伸ばす右腕を全力で押さえつける。そして、丹念に洗ったばかりの包丁を振り下ろした。
隅に寄せたボストンバッグが赤く染まっていく。
洗剤で隅々まで洗いピカピカにした風呂場に聖なる水を流す。袋口を開き赤い血が滴る右腕をそっと取り出す。思わずため息が出た。
「あと……半分」
右腕にチョロチョロと水を垂れ流す。
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