Date3:下校デート

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今日の目的はいつものデートとは違う。 会話を楽しむためでも、ジャンクフードを食べることでも、互いの秘密を打ち明けることでもない。 今日、俺がしなければいけないことは――。 俺は、海幸が来るより30分早く待ち合わせの浦見ヶ崎高校の校門前で待っていた。 海幸は俺の二歳年下でまだ高校生だった。海幸のスケジュールだと、平日のこの時間帯は、まだ高校のオーケストラ部で部活中のはず。ずいぶん懐かしくなった制服のズボンに手を入れ、携帯を取り出す。 ワンタッチで画面を開くと、自動的に新着メール画面へと切り替わる。奴からのメールだった。 「やあ。ようやくこのときがやってきたな。手順はきっちり覚えてきたかい?」 携帯を持つ手が震えているのがわかる。それでも、メールを返信しようと文字ボタンに指を伸ばすが、それより先に次のメールが送られてきた。 「返信の必要はないよ。君の考えは僕に筒抜けだからね」 一拍おいてまたメール。 「さて、心配しなくていいよ。今回は初回サービスということで、次の展開を手取り足取り教えてあげるよ。まあ、もちろんメールのみなんだけどね」 そういうことじゃない。俺は……。その先は言葉にならなかった。というより言葉にしてはいけなかった。 「恐れる必要はないさ。君が契約を守れば、ちゃんと彼女は還ってくるよ。それとも放っておくのかい? 君のせいでこうなって――」 文章を全て読む前に、携帯を閉じる。携帯が命が宿っているかのように振動した。 「君はやるしかないんだ。そうだろう?」 肺を最大限にまで膨らせるぐらい息を吸い込み、勢いよく全て吐き出す。そうだ。やるしかないんだ。 「よし。まずは条件その一。何でもいいから水に関する場所へ連れていくこと」 わかってるよ。頭にこびりつくくらい、何度も何度も暗記したんだ。 「必死だねぇ。おっと、彼女が来たみたいだよ」 携帯を素早くポケットにしまうと、俺は校舎から駆け寄ってくる海幸に手を振った。 「ごめん、待った?」 気にしてないと、笑顔で返す。ぎこちなく映っていないといいけれど。 「そんなこと言って~。ちょっと怒ってるでしょ。ほら、表情堅いよ」 そう言うと、海幸は、俺の頬をいじくり回した。楽しそうだ。本当に楽しそうだが。海幸の鼻をつまむことで、その動きを静止させる。 「い、イタ」 すぐに指を離す。 「も~。よし、帰ろ」
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