コバヤシシオンという存在

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彼女の肩に積もる雪は、彼女自らがほどこした鎧のように見えた しんしんと降る粉雪は、誰にでも平等に舞い落ちる ぼくが小林さんを初めて見たとき、彼女は雪に埋もれていた 本州ではどうなのか知らないけど、ここでその状態にあることは文字通り自殺行為だ この北の地に住む者にとっては雪は厄介者でしかなかったりする 本土の人達は雪に憧れたりするらしいけど、ぼくのような純正地元人はそんな気持ちをまったく理解できない 考えてもみてほしい 本来はごくごく小さな氷の粒でしかない雪 でも、固まりとなったそれは人や物を破壊可能な暴力を有する 毎年、必ずといっていいほど確実に数人は落雪とかで死んでしまう そんな存在をどうして歓迎できるか? 答えは否だ ぼくのおじいちゃんは屋根の雪落しをして、屋根から落ちた その怪我、全治三ヶ月 ぼくだって中学のとき、下校途中に雪で滑って車に撥ねられた つまり、だ 結論から言うと ぼくは、雪が大嫌いだ
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