七ツノ大罪

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きゅるきゅると、お腹が鳴る。 そういえば……と。 久しく、まともな食事をしていないことに彼女は気づいた。 最近食事らしい食事をしたのはいつだったのだろう。 どうしても思い出せない。 我慢のしすぎだね、と彼女は小さく呟いた。 辺りには、ざあざあと大粒の雨が降り落ちている。 今、季節は雪虫が舞い飛ぶ初冬。 最後の足掻きだとでもいうように、遠慮の知らぬ雨が、彼女に、そして名もなき枯れ草になだれおちていた。 それらを守るものはただの一つもない。 そこにあるのは、煌々と炯〔ひか〕る緋色の月のみ。 食事をしようと動き出した彼女を見るものは。 すくなくとも、意識を持つ生命体にはいなかった。
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