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僕は折れそうになる心をぐっと抑えて立ち上がった
まだ諦める訳にはいかない!
僕がどれだけ今日この日を待ちわびていたか…
大丈夫、
幸いなことに家はまだすぐそこに
彼女の隣では見劣りしてしまうが
この際普段着でも仕方がない…
だが、たとえ大事な一張羅を失おうとも
僕にはまだ切り札が残っているのだ
そう、
この彼女の大好きな
『まりもっこり人形』が!
わざわざ北海道まで行って手に入れてきた一品
後で簡単にインターネットで手に入ることを知ったがそんなことはどうでもいい
一番大事なのは、今の僕にはコレがあるとゆうこと
ああ、彼女の喜ぶ顔が目に浮かぶようだ
そんな事を考えながら大事に胸ポケットにしまっていた彼女へのプレゼントを取り出した
その瞬間‼
敵は既に背後にまで迫っていたことに僕は気付けなかった…
通称タロー
なんでも咥えて持ち去ってしまう習性を持つ
ホンの一瞬の隙に僕の切り札はタローの口の中へと移動した…
あ゙ぁぁぁ~
奴(タロー)は嬉しそうに全力で尻尾を振っている
大事なプレゼントは既に奴(タロー)の唾液まみれに…
いや、まだだ!
綺麗に包んだラッピングは無残な姿になってしまったが
中身の方はきっと無事だ
多分…
僕は時計を確認する
約束の45分前
まだ猶予はある
奴(タロー)から僕の宝を奪い返すんだ!
「ほぅ~らタロー、こっちへおいで~、また撫でてあげるよぉ~。」
僕は満面の笑みでタローに手招きした
が、
タローは僕から距離を取る
何故だ?
焦った僕はタローに一歩近づく
それが引き金となった
タローは全力で走り去る
僕とは逆の方向へと…
何故逃げるぅ~!
奴め、僕と遊んでいるつもりなんだな
こうなったらこちらにも男の意地がある
人間様が本気を出したらどうなるか思い知らせてやる
僕は全力でタローを追いかける
しかし残念ながら純粋なスピード勝負では犬に勝てるはずもない
おまけに体格差を利用して狭い場所へと侵入されたらお手上げ
そうなる前に決着をつける!
ある程度距離を詰めると僕は秘密道具を取り出した
パッパラパッパッパー
『ひのきの棒』
ひのきかどうかは知らないが、
僕はさっき追い掛ける前に近くの木の枝を拾ってきたのだ
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