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iPodがニルヴァーナを流す。
カート・コヴァーンの声と、ノイジーなギターが心地よい。
数学の授業なんて聞く気にはならない。
胃が痛くなるだけだ。
教師の林は、気の抜けた声で、草臥れたスラックスに手を突っ込んだまま、だらだらと授業を続ける。
ヴォリュームを小さくしているから、嫌なのに声が入ってくる。不快だ。
サイレントモードにした携帯が光る。
画面を見たら、田畑からだ。
田畑を見る。
何食わぬ顔で前を見ている。
ますます、あの真面目っ子が分からなくなってきた。
澪に話したくても、ずっと寝ている。
いつまで寝るんだこの女。
「高埜、この問題解け」
呼ばれた。もちろん、聞いていなかった。
「分かりません」
即答する。
林もいい加減、私とのこのやりとりに飽きたらしい。
今日は、そうかと言わずに「少しは考えろ。前出てやってみろ」と言う。
めんどくさい。
仕方ないので立ち上がって、前に出る。
チョークを持って、某商業的アトラクションランドのマスコットキャラ、商業主義のドブネズミのイラストを書いて、隣に問題の答えを書いて、席に戻る。
ついでに澪の頭を軽く小突く。
「起きろ」
小さい声で呟いた。
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