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昼休み。
いっこうに起きない澪の上履きを脱がせる。
そして、それを鼻の前に持っていく。
声に出さずに、数を数える。
「クサっ…」
澪が顔をしかめて、目を覚ました。
「15秒か」
けっこう長かった。
「あんたさ、なんで普通に起こしてくれないの?」
呆れた、この女はあれだけ起こしてやったのに。
「あんたは、いつになったら普通に起こして起きるようになるの?」
「…」
「食べよう」
弁当を澪の机に起き、前の席の椅子に座る。
食事時の教室は、わりと静かだ。
「…鰻かよ」
澪が自分の弁当箱を開いて、顔をひきつらせている。
弁当箱のご飯の上には、どうどうと鰻の蒲焼きが乗っていた。
「スゲー、お母さんクールだね」
感動した。澪には悪いけど、面白い。
澪の母親はいわゆる天然で、ときどき弁当には似つかわしくない物をご飯のお供にと添えている。
この前は塩ホルモンが入っていた。
澪はもう慣れているそうで、そのまま食べ始める。
「ねぇ、高埜さん」
気がつけば田畑が横に立っていた。
悔しいけど、ビクッとした。
「なに?」
なぜか恥ずかし気に缶ジュースを手渡す田畑。
「これ、あげる」
そう言って、自分のグループのメンバーのもとに帰っていった。
澪が微妙な顔で私を見ている。
返しようがないので、私も微妙な顔で澪を見返す。
「モテるねぇ」
「くっ、うるさい!」
いけない、ビッチって言いはなつとこだった…。
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