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非常階段の踊り場から見える景色は、なんだか大きな風景画みたいだ。
学校の裏山は歪な形で、中腹がへこんでいる。
木があまり生えていないその辺りを、ぼんやりと見つめながら田畑に貰った缶ジュースを、一口飲む。
「田畑はさ、あんたのことカッコイイって言ってるだけじゃん」
澪はそう言うと、私の手からジュースを取って、一口飲んだ。
「意味分かんない」
「ツンツンすんなよ。ツンデレにしろよそのほうが萌えるんだよ」
「やかましい、この変態ビッチ!」
言ってしまった…。
「酷いなぁ。なんで田畑にそんなに厳しいのさ?」
「真面目なルックスと軽さが腹立つ」
「ギャップ嫌いか、新しいね」
「真面目に言ってんだよ」
「そんなにイライラしないの。禿げるよ」
大きくため息を吐く。
煩わしい。
どうしてこんなにイライラするんだろう。
「せっかくだし、ゆっくり話してみたらいいじゃん」
「…」
「あんたら音楽好きだし、話せるよ」
そう言って、長くて綺麗な黒髪を、気だるそうに掻き上げる。
「無理しなくていいけど」
「田畑、ノーマルだよね?」
澪は少しだけ目を細めて微笑み、「さぁね~」と言いながら、階段を駈け上がっていってしまった。
チャイムが鳴り出した。
私も澪に続いて階段を上がる。
特に、何を背負っている訳でもない。
なのに、酷く憂鬱で、イライラしてしまう。
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