受験生

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「どうした?」 侑也がお小遣貰った子供のようにうきうきしている。 「いやっさー! 駅の向こうにさ、お好み焼き屋できたみたいで、 今日帰りに寄ろう! 司藤がさ、この間行って割引券もらったし。」 目を輝かせて言ってきた。 お好み焼きだと…! 「まじっ!?行く! めっちゃお腹空いたし。」 「だろ!しかも、めっちゃ上手いらしいけんね。 帰る準備したらまた来るわ!」 ダッシュで教室に向かって行く侑也。 子供のように無邪気で、 気使わなくて楽だなぁ。 「佐上君と仲良いね。」 「うわっ!?」 背後から急に声がして、思わず驚いた。 「一ノ瀬君か…。 まぁ、侑也とは小学生からの仲だからね。 兄弟みたいなもんだよ。」 「へぇー、そうなんだ。」 なんだか不満げな顔をする一ノ瀬君。 「どうかした?」 私は尋ねた。 「…俺の名前、邦だよ。」 拗ねた顔で答える。 …………めんどくさい。 「あぁ、ゴメンて。 邦ね。覚えとくよ。」 「ちゃんとしてよ。 ついでに、俺は環って呼ぶから。」 パァーっと花が咲くように笑顔になる一ノ瀬。 今まで、部活で忙し過ぎて気づかなかったけど、 めんどくさいやつが隣になったな。 「好きにしなよ。私は呼び方にこだわらないし。」 私は帰る準備をすることにした。 お好み焼きを食べると聞いて、 空腹が増したしな。 .
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