呼び声。

2/16
前へ
/60ページ
次へ
… ……… …………………… 声が聞こえる… その声は僕を呼んでいる… 優しい声。 それはまるで、素晴らしいことをした子供を誉める親のような、悩みを打ち明けてくれた友人を慰める親友のような、そんな声だ。 だが、何を言っているかは解らない。 声のするところまでの距離が遠いのか、ぼやけていて聞き取れない。 しかし、その声が僕のことを呼んでいる… 何故かそれだけは解るのだ。 僕は行かなければならない。 そこに行かなければならない。 これ以上待たせては失礼だ。 待っていて… 今から行くから… 僕はあるのかも解らない自分の手を精一杯伸ばした… ピピピピピピッ ピピピピピピッ ピピピピピピッ 静かな部屋に渇いた機械音が鳴り響き、僕は目を開けた。 目の前に見えたのは、何もない、無機質な天井だった。 「朝か…」 誰に言うでもなく呟いた
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加