14人が本棚に入れています
本棚に追加
「はー、
俺、戸締まりしてくるからお前ここで待ってろ」
「っえ……」
「いいな」
「は、はいっ……」
僕に命令すると、頭をぼりぼり掻きながら、男子生徒は戸締まりを確認しだした。
僕はその場に座り込む。
怖……かった、
2年にあがって初めて幸以外の人と話した。
「う――幸っ……」
僕は手のなかのちいさなノートを握り締めた。
ねぇ、僕の手に触れてよ。
どうせさっきの男子生徒にもこの後からかわれて笑われるか、屁理屈いわれて殴られるかなんだ。
だからその前に、
『藤村、帰ろう?』
「ゆ、ゆき――――……」
いない。
なんで。なんで?
いつも呼んだら来てくれるのに。
友達じゃなかったの、僕ら。
僕の目の前にあるのは壁だった。
僕の手のなかにあるのは妄想の残骸。呼吸なんてしない。
形ある幸に触れてしまったから…このノートじゃ寂しさが埋まらないよ。
.
最初のコメントを投稿しよう!