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ねぇ幸………幸、…
どうか僕の手を握って。
僕はぽたぽたと、ちいさなノートの上に涙をこぼした。
「幸………」
呼んでもこたえてくれなくて…
鼓動はひとつ。
日が沈んでゆく。
「ほら」
「あ…う、え?」
「なんだその返事。
早くふけ。腫れるぞ。」
見上げると、さっきの男子生徒。
戸締まりが終わったようで、彼は濡れたタオルを僕に差し出してきた。
僕は返事も反応もせずに、彼の手に握られたタオルを黙って見つめていた。
「ったく…」
「っ……つめたっ…!」
男子生徒は僕の前に座り込んで、僕の顔をふきだした。
「う、何するんだよっ…」
「お前が無視するからだろうが」
彼が僕の肩に置いたてが怖くてまた泣きそうになる。
ていうか力強すぎるよ、顔の皮はげちゃうよ…。
「……なぁ、まさかとは思うけどさ、藤村俺のこと誰だか分かってるよな?」
男子生徒がふきながら僕に問う。
知らないよ……
目…、目!
怖いよ目が…
「ごっごめんなさいっ…
わ、わ分かりません……っ」
「どもるなよ」
ふざけんなって言われて殴られるかなと思ってたのに、彼は少し傷ついた顔でクスクス笑った。
予想外だったからつい思わず彼の顔を凝視してしまった。
見つめてみれば、とてもキレイな顔立ちだった。
可愛らしい幸とは違うが、男らしい雰囲気だ。
かっこいいっていうんだよな…
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