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「はーすっかり暗くなっちまったな」
「そ、うだね…」
「……」
会話がぎこちない。
結城はカッターシャツの袖を捲り上げて手でパタパタ自分を扇ぐ。
そこまで暑くないと思うんだ。
僕はばしゃばしゃ流れる川を見ていた。
排水溝から洗剤が溢れていた。
汚い………
「藤村、家どこ?」
「あ、南町…です、三丁目の」
「そう、てかさ」
「っ?」
「敬語やめろよ、
あと俺のこと結城って呼べ。いいな」
笑いながら頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
幸とは違う…
幸とは…
でも
「いたい、いたいよ…」
「え?うわ、おい」
「いたいよぉ……」
「すまん、そんな痛かったか?」
幸がいない……
幸がいないことが、こんなにさみしい。
「と、とにかく帰ろうか、
人も通るし」
「う……ぅ…」
結城は僕の左手をとって歩きだした。
僕は顔に手を当てて泣いたまま、引っ張られていった。
通行人が不審げに見ていたのが、にじんだ風景にも分かった。
握られたてが優しい。
幸じゃないけど…
僕よりずいぶん大きい背中が目の先にある。
ねぇなんで
僕にかまうの?
笑いあうのは、友達同士で、でしょ?
僕なんかほったらかして帰ったってよかったのに。
僕の友達は幸だけなのに。
さみしい……
さみしいよ
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