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「おーきたきた!」
玄関の戸を開けた途端、
待ちぼうけしていた結城が僕に向けて手を振る。
「あれ?
全部着替えてきたのか?」
「あ…うん、暑かったので…」
「け・い・ご!!」
「あっは、はい…
いいや、うんっ…」
慣れない言葉遣いに戸惑うと、
結城は僕の頭に手を置いてなでてというか、ガシガシ擦ってきた。
さっきよりも優しく。
僕が泣いてしまわないように…
なんてことはあるんだろうか?
今度はなんだか口もとが少し緩んだ。
僕の顔は笑っているって形容するには程遠いけど。
結城を見上げると、彼は優しく笑う。
その笑顔は僕にうつってしまいそうだったけど、
僕の表情筋は受け入れてくれないみたい。
「なんにする?
回る寿司とかがいい?」
「え、う、うん。
なんでも…いいよ、?」
明るい街の中をぶらぶら。
夜の街ってなんだかカッコイイ。
でも何が良いかなんて、
僕は外食しないし分からない。
相手に合わせようと思って曖昧に受け答えると、
結城は呆れたように腰に手を当てて下を向いて息を吐いた。
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