*互いが互いを

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結城は、帰りは僕の家までついてきてくれて、 また来週と言ってさわやかに去っていった。 僕もあんなふうになりたかった、と思った。 結城は背が高くて、 男らしくてとても目を引く(今気づいたんだけど)。 だからと言ってそれをいいことに、とかはしたりしない。 僕はどうだ。 女みたいな大きさに頼りない体つき。 僕を笑う人たちに下を向くことしかできない。 僕は帰ってきたままの格好でベッドに倒れこんだ。 リモコンで部屋の電気をつける。 ふとケータイ電話が欲しいなと思いつく。 僕は今までもっていなかったのだ。 久々に他人と喋って浮かれていたっていうのもある。 僕は人がきらいなわけではないのだ。 ごろごろ寝返りを打つと家を出るとき脱ぎ捨てた制服があった。 しわになっちゃうと思って取り上げると、 その胸ポケットから小さなノートが落ちてきた。
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