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「待てよー!」
「やだねー!」
雲一つない青空の下、橙色のレンガ道を子供達が駆けていく。何てことない、王都の昼下がりの光景だ。
と、町中にピィー……と鳥の鳴くような甲高い音が響いた。速さを競っていた子供達ははっと足を止め、空を見上げた。
次の瞬間、雲一つない快晴にも拘らず、ふっと影が落ちた。青空は灰色の何かにさえぎられ、突風が町中を巡る。子供達は強風に目を細めながらも、わくわくを隠しきれないといった笑顔で空を見続けていた。
ばさり、ばさり。羽ばたく音が聞こえる度、灰色は細くなり、やがて見えなくなった。
青空が見えたのも束の間、上空を鳥――にしては大きくがたいがいいし、トカゲのような尻尾がある――のようなものが横切って行くと、わっと歓声が上がった。
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