2010.07.神奈川県

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夕方6時頃、日はすでに西に傾きつつあり、辺りはよく熟れたオレンジ色に染まっている。 その中を一人の少女が通学かばんをしょい、音楽を聞きながら歩いている。 時々、吹く風が彼女の黒紙を後ろになびかせる。 成績、中の上。運動神経、壊滅的。人間関係、一般。過去に好きな人、アリ。現在、青春満喫中。 彼女を表すと、ざっとこんなものだろうか。 ―浜里 亜由美(はまざと あゆみ)。 中学3年。容姿端麗で明るく活発な、神奈川第一中学校の生徒副会長だ。 突然、ピピッと電子音が鳴った。 亜由美の目がすうっと細くなる。 サブディスプレイに表示された名前をさっと確認してから、彼女は電話に出る。 「はい………うん……………そうか…あぁ、了解した」 素早いやり取りを終え、亜由美は空を一瞥した。 その目線に怖かったのか、近くの鳥の群れが一斉と飛び立った。
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