0人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方6時頃、日はすでに西に傾きつつあり、辺りはよく熟れたオレンジ色に染まっている。
その中を一人の少女が通学かばんをしょい、音楽を聞きながら歩いている。
時々、吹く風が彼女の黒紙を後ろになびかせる。
成績、中の上。運動神経、壊滅的。人間関係、一般。過去に好きな人、アリ。現在、青春満喫中。
彼女を表すと、ざっとこんなものだろうか。
―浜里 亜由美(はまざと あゆみ)。
中学3年。容姿端麗で明るく活発な、神奈川第一中学校の生徒副会長だ。
突然、ピピッと電子音が鳴った。
亜由美の目がすうっと細くなる。
サブディスプレイに表示された名前をさっと確認してから、彼女は電話に出る。
「はい………うん……………そうか…あぁ、了解した」
素早いやり取りを終え、亜由美は空を一瞥した。
その目線に怖かったのか、近くの鳥の群れが一斉と飛び立った。
最初のコメントを投稿しよう!