失望からの出逢い

9/10
前へ
/51ページ
次へ
「あの時はびっくりしたよ・・・ もうダメかと思ったし。」 俺はその時浮かんでいた感情を言葉で表すなら2つの単語を使用する。 それは「失望」「驚愕」である。 今まで信頼していたものが一気に崩れ去った。 今までの俺の人生は何の意味があったのか分からなくなってしまった。 「とにかく・・・家まで送って行くよ。」 車で行ってもよかったがそうするには企業内に入る必要があるのでその危険を侵すまいと歩きで行く事にした。 「そういえばさっきは助けてくれてありがとう! 私は清水 優奈だよ。」 優奈と名乗った少女は、子供らしさが垣間見える笑顔をこちらに向けてきた。 なかなか純粋でいい女の子みたいだ。 「俺は、立花佐久・・」 「ならさっくんだね!!」 は? 一瞬であだ名をつけられた。 まるで10年以上前から考えてきたかのように。 「は?」 「!! 何で喜ばないの? あだ名だよ? 一生涯の栄誉だよ!」 「何故お前に一秒も費やさずに作られたものを一生涯の栄誉にしないといけないんだ!」 「えっ? そ、それは・・・」 核心をついたのか優奈は黙ってしまった。 どうやら失言は日常茶飯事らしい。 「もういいよ・・・ 俺にはもう信じられるものがなくなってしまった。」 俺は失望の中で何を思ったか、 ただ黒い闇に飲み込まれていくだけの思いを 「そんな・・・ なら私にいい考えがある!!」 と優奈は威勢の良い挙手を始めた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加