7月下旬 雨 種を植える

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「でさー、試合会場だとやっぱどこも女の子たくさんいるわけじゃん?俺らんとこと違って。」 「まぁね、此処男子校ですからね…。」 信号待ちで、立ち止まると雨粒に濡れる校舎を振り返る仁宮。 「それだけなのに、体育館がスゲー華やかなるんだよねぇ。パァッて。それが不思議。」 三ツ葉も身振り手振りを入れて喋るせいで、ずり落ちてきた肩掛けの鞄を持ち直す。 俺はというと傘の柄をくるくる回して両者を見てる。 「確かにそれあるよなぁ…。 なんか景色が明るくなるしね。」 それこそ女子の特有の明るい色の持ち物だったり、専用の清汗剤の香りがそう思わせるのかもしれない。 「それからさ、よく女の子に話しかけられる事もあるんだけど…普段、男だけで居慣れてるから…何話していいか分かんないんだよねぇ。」 「そんなの、普通に接すればいいじゃないの。変に気構える所が人見知りなんすよ。三ツ葉さんは。」 「いや、仁宮は親戚とか女ばっかりだから平気なんだよ、きっと。」 俺だってその場に居合わせたら何話していいか分かんないと思う…普段ムサっ苦しい中にいるせいで余計に。 「まぁ、確かに小さい頃から女子の扱いは慣れてますね。」 平然と答える仁宮を三ツ葉が羨ましげにため息をつく。 「いいなー。俺なんて親戚も家族も男だらけだったもんっ。俺、女の子がはっちゃっけてるの見るだけで時々ビビるよ?」 「まぁ…、大体そんなもんじゃない?特にそう思うのは俺らの普段が普段だからだよ。日常生活に女がいないと飢えるか乾くかのどっちかなんだよなぁ。」 「正さんは普段からエロ本熟読してますもんね。二次元で足りてるんですよね?」 そう言って仁宮がニヤリと微笑む。そうそう、二次元の方が色々と楽なんだよ…って、オイっ! .
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