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信号が青になっても妙なやりとりのまま会話が進行し、結局別れ際までソレだった。
「何事もガッツかないのがモテますよ~、男も女も。」
「いや、だからガッツいて無いってば。」
「そうそう!でも俺、何事も不器用な正ちゃんが大好きだよっ。あ、もちろん友達として。」
「お前が一番酷いよ、三ツ葉。」
不器用だなんて会話に出てきてなかったんですけど。しかも、さり気なく予防線まで張りやがって。
だから俺はそっち系でもないし、飢えてないっつーの!
「正さん。明日、漫画貸してあげるから元気だして下さいね。」
「正ちゃんバイバーイ
また明日ね!」
「また明日っ。
それと仁宮っ!漫画いらねーからなっ。そもそも学校に持ってきちゃ駄目だぞっ。」
雨に溶け込む後ろ姿にそう投げかけると、2人は聞こえないフリしてワザとらしく手ぇ振ってくる。
ちくしょー、そのネタ絶対明日には忘れてろよっ。運動音痴以外でからかわれるのなんてもうウンザリだからな!
これ以上のクラスでのキャラ崩壊防止を切に願いながら、1人で帰路に就く。
校舎から少し離れた所にある寮棟。その二階の3104号室が現在、俺の住処。
寮生活を送って早2年。
最初は一人暮らしってのに全然慣れてなかったし、見える物全てが新鮮だったけど、今では一人の空間で過ごす方が自然だったりする。
情緒溢れるこの景色も、見慣れてしまえばただの田舎町にしか見えなくなってくるものだ。
俺って基本的に都会っ子なのかもしれない。
やっぱり何か物足りない気ぃするんだよ。
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