7月下旬 雨 種を植える

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信号が青になっても妙なやりとりのまま会話が進行し、結局別れ際までソレだった。 「何事もガッツかないのがモテますよ~、男も女も。」 「いや、だからガッツいて無いってば。」 「そうそう!でも俺、何事も不器用な正ちゃんが大好きだよっ。あ、もちろん友達として。」 「お前が一番酷いよ、三ツ葉。」 不器用だなんて会話に出てきてなかったんですけど。しかも、さり気なく予防線まで張りやがって。 だから俺はそっち系でもないし、飢えてないっつーの! 「正さん。明日、漫画貸してあげるから元気だして下さいね。」 「正ちゃんバイバーイ また明日ね!」 「また明日っ。 それと仁宮っ!漫画いらねーからなっ。そもそも学校に持ってきちゃ駄目だぞっ。」 雨に溶け込む後ろ姿にそう投げかけると、2人は聞こえないフリしてワザとらしく手ぇ振ってくる。 ちくしょー、そのネタ絶対明日には忘れてろよっ。運動音痴以外でからかわれるのなんてもうウンザリだからな! これ以上のクラスでのキャラ崩壊防止を切に願いながら、1人で帰路に就く。 校舎から少し離れた所にある寮棟。その二階の3104号室が現在、俺の住処。 寮生活を送って早2年。 最初は一人暮らしってのに全然慣れてなかったし、見える物全てが新鮮だったけど、今では一人の空間で過ごす方が自然だったりする。 情緒溢れるこの景色も、見慣れてしまえばただの田舎町にしか見えなくなってくるものだ。 俺って基本的に都会っ子なのかもしれない。 やっぱり何か物足りない気ぃするんだよ。 .
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