序章

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 静寂を破るように少女の寂しげな泣き声が少女の一族が定めた聖域の社にこだまする。  もう子供が外に居て良い時間ではないにもかかわらず少女は外に居る。  少女の一族に代々伝わりし、しきたりと覚醒の為に彼女は聖域たる社に置き去り状態であった。  彼女は数少ない言霊使いの一族の生まれで一族の子供が満三歳になった時に社に置き去りにし、置き去りされた子供は"言霊使いとして覚醒"しなければ誰も助けには来ないという厳しいしきたりである。  それにしたがい、少女も"覚醒"しなければ一族に取っては不要な「存在」と成りかねない。  少女は泣きながらも叫ぶ。 「『助けて』!『此処』から『助けて』っ!」  少女はキッと真剣な表情をし、微力な力を「言霊使い」が使う術式を少女は無意識に組み上げて「声」に出す。 「『助けて』っーーーー!!」  少女が放つ凄まじい言霊の力に一族が社に張った結界にひびが入る。  それと同時に少女にも異変が起こった。 「やだ…。『入って来ないで』!『私』の『中』に『入って来ないで』!!いやっ…いやあああっ!!」
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