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「お~い、風助~」
ペダルを全力で漕ぐ少年の隣を涼しげな表情で少年に呼びかける。
「何だ!金持ち小僧!」
風助は決して声の方向を向かずに怒鳴る。
「金持ち小僧は酷いなぁ」
金持ち小僧と呼ばれた少年は車の窓から顔だけ出してニヤついている。
「うるせぇ!京一!車に乗って学校来てる時点で金持ちだろうが!」
「ふ~ん……そういう事言うんだ……せっかく乗せて行ってやろうと思ったのに……」
「えっ!マジで?」
「でも乗せてやらな~い、じゃ頑張って~」
そう言って京一を乗せた車は風助を置いて行ってしまった。
「ちっくしょぉぉ!」
置いてきぼりにされた苛立ち無駄な労力を使った虚無感が合わさってぶつけようのない怒りを空に向けて叫んだ。
それでも時間が戻るわけでもなく、時計は遅刻五分前を指していた。
「ぬあああああぁぁぁ!」
風助はその残り時間に全てを出し切るつもりで再び全力で漕ぎ始めるのだった。
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