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「よし、じゃあここの文章を復習がてら黒宮、読んでくれ」
「はい……」
風助の前に座っている黒宮と呼ばれた生徒が立ちあがった刹那、教室内が凍りついた。
中には耳を塞いでいる生徒までいる。
「Howdoes the solar power work? The panel......」
少女は流暢に教科書を読み始める。
しかしその教科書の音読をまじめに聞いているのは恐らく教壇の上に立っている教師だけだろう。
黒宮 美那子(くろみや みなこ)。
図書局員。
身長160前半と女子では割と長身。
体型は真夏でもブレザーを着ているせいか断定はしがたいが、そこまで悪い感じではない。
とは一部の男子がまことしやかに囁いている内容。
彼女の特徴は……黒髪。
そうとしか言いようが無い。
常に前髪で顔を隠すように髪を垂らし、顔は全く分からない。
過去に何人か彼女を素顔を見た者がいたそうだが、その後例外なく全員が何かしらの事故に会うという謎の事態。
一部では黒魔術に精通しているとか、呪術王の末裔だとかオカルトめいた噂まで流れている。
そんな彼女についた影のあだ名が『疫病女神』。
そんなあだ名と噂でどうなったかというと、半径5メートル以内に誰も近づかないという明らかに苛めとしか言いようが無い状況を作り出してしまった。
彼女への肉体的な苛めは存在しない。
苛める方が苛めた後を恐れているからだ。
しかし誰も相手をしないという精神的な苛めは続いている。
そんな状況でも毎日学校に来ている黒宮を風助は感心……というよりも尊敬していた。
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