プロローグ

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死ぬ覚悟を決めた彼女の瞼の裏に、様々な景色が走馬灯のように広がってゆく。 忘れていた幼いころの思い出や学生だったころの思い出、身を切り刻まれるほど悲しい思いをした初恋や、反抗期から家族との確執も何度かあったのを思い出した。 一番鮮明に映ったのは、大きな愛で包んでくれた恋人との日々だった。 ここが私の居場所なのだと思わせてくれた人だった。 死ぬ前に大好きな彼の姿が見られて幸せだと感じた。 次々と彼は瞼の奥に現れ、自分はいつ意識を失うのか分からないから、一生懸命見ようと決めた。 最後くらいは幸せな気分で死にたい。 こんな私でも神様もきっと許して下さる と、思わずにはいられなかった。
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