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暑い。暑い。
夏だからしょうがないで済む暑さではない。
どうしようもなく暑い。
汗が蝉の金切り声に誘われるように、じわり、じわりと作業着の中に着込んだ肌着を湿らせていった。
こんな真夏日に直射日光を浴び続ける仕事とは聞いてなかったよ、と、俺は心の中で盛大に愚痴をこぼす。
気のせいだろうが、肌が焦げる匂いすらする。黒髪が映えるように白かった肌が赤く熱を持ち、すっかり褐色。
それくらい夏の陽射しは過酷だった。
「さて、と…。」
このまま黒くなっては敵わない。
その一心で何とか仕事を片付けた俺は、そこかしこに広げていたペンキやブルーシートや刷毛などの仕事道具を手際よくまとめ、「ペンキ塗りたて注意!」の立て看板を壁の前に立てる。
そして上手い具合に塗り上げた壁にぽっかり口を開けたような、地下へと至る階段を降りる事にした。
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