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食券を買った津波は何を買ったか治には見せずにおばちゃんに手渡した。
その後、出てきた物を見て笑いを堪える。
「ほら、治。『きつね』だ」
「ぷっ…」
先に席に座っていた治の横で一輝が吹き出す。
「おぉっ!?てめ、ツナ!やりやがったな!!」
「俺はきつねを買ってきただけだぜ?」
津波がテーブルに置いたそれは……。
「これ、強烈熱死カレーじゃねえかっ!!」
強烈熱死カレー……略称きつね。
数多くの猛者がチャレンジし、散っていった悪魔のような激辛カレーだ。
過去、このカレーを完食できた者は片手で数えられるほどしかいない。
「今日は俺達のおごりだからよろこべ」
爆笑しながら通常なら嬉しい言葉を言う一輝。
しかし、このカレー……売値は300円だが、残すと1000円取られる。
それだけ材料に金がかかっているというわけだ。
「やろ…、俺が何をしたって言うんだ!」
「女子ばっか見てるからそうなる」
津波と一輝が同時に頷く。
気がつくと久々にチャレンジャーが現れたと聞いて集まったギャラリーが三人を囲んでいた。
「さぁ、治。いってみようか。さぁ!」
いやぁぁぁっと治の断末魔の悲鳴が聞こえたのはそのすぐ後であった。
午後の授業もなんとか乗り切った津波は、クラスメイトとの会話もそこそこに部活に向かう。
津波はバスケ部に所属していた。
大して強くない学校だが、その中で彼はレギュラー。
貴重な戦力となっている。
「早河っ!!」
「よっしゃ!」
実戦形式の練習は彼が最も好きな練習の1つだった。
大好きなバスケの為に基礎練習をするのももちろん楽しいが、やはり最高の楽しみは試合だと彼は思っている。
津波にとってバスケはやりがいのある遊びなのだ。
そんな有意義な時間を過ごしていた津波を目当てに何者かが訪ねたのは練習も終わりに近づいたその時だった。
「ツ~ナく~ん♪」
「早河……また来てるぞ………」
先輩が苦笑しながら指をさした方を見ると、やはりというか……その娘がいた。
「行ってきます……」
アレは放っておくと『ツナく~ん』と叫び続けるので迷惑なのだ。
幸い練習後半にしか来ないから津波はそのまま練習を終える。
いつものことだ。
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