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津波が軽く汗をタオルで拭い、とっとと着替えて出てくると、冗談みたいな小さな身長で、それでいて不似合いな高校の制服を着ている女の子が駆け寄ってきた。
小動物に対して使うような表現で可愛い女の子だ。
「遅いよ、ツナくん。ちこく~」
「いやいや、部活終わる前に出てきてるんですよ、こっちは」
「ボクが待ったことに変わりはないね」
カンナ・シュバリトールというのが彼女の名前。
留学生という形でこの学校へやってきた彼女は津波の1つ上の学年。
こんな見た目で先輩なのだ。
津波とはよくつるむ仲のいい先輩という立ち位置で、毎日下校する時になるとこうして津波を迎えにくるのだ。
「屁理屈ですか、正直あり得ませんよ、その理由……」
「むぅ……ボクはツナくんよりお姉ちゃんなんだから、逆らっちゃダメなのっ!」
「お姉ちゃんねぇ……」
津波はため息をつきながら自宅への道に足を踏み出すのだった。
「そういえば先輩、前言ってた実験に猫とか犬が必要だって件。どうにかなったんですか?」
帰り道も後半に差し掛かった頃、津波がカンナに尋ねた。
「あぁ、その話?だいじょび、のーぷろぶれむ。近くで野良猫拾えたから」
「そうですか……」と小さな声で頷いた津波の目はどこか悲しみか哀れみかが感じられた。
それに気づいたカンナが「ん?」と首をかしげる。
「いや、何の実験か知らないですが、生きた動物を使うだなんて……ちょっとだけ先輩の良心を疑ったんですよ、ぶっちゃけると……」
津波にとって生き物は友達であり、家族でもある大切な存在だ。
少しキツい言い方だが、彼はどうしてもカンナのしていることが気に入らなかった。
「実験は成功したし、猫ちゃん喜んでたし、ぐっじょぶだよ、ツナくん。ツナくんが動物好きなのは知ってるから、イライラするのはわかるけど、心配いらないって」
そうカンナが言うがどうにもこの点に関しては津波は肯定しきれなかった。
津波は知っていた。
カンナは人よりわがままで、自己中で、人の意見なんか聞かない人間だって。
それが原因でカンナには津波以外の友達がいないのだ。
「まぁ……そこまで言われると何も言えませんけど…………」
津波は心にモヤモヤを抱えたまま、ぐっと飲み込んだのだった。
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