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カンナと家のすぐ近くの交差点で別れた津波はまっすぐに自宅を目指した。
津波の家は大きな住宅街でも中心の方に建っているため、知らない人が訪ねるには一苦労だ。
津波の家に迷わずに来れるのは、津波のことをよく知る人間か近所の野良猫くらいしかいない。
やがて、自宅にたどり着いた津波は玄関に何も言わずに上がる。
人の気配も全くしない家。
それはこの家では当然のことだった。
母親は津波が産まれたばかりの頃に離婚して家を出ていき、父親は海外に単身赴任している。
実質、津波は一人暮らしだった。
もちろんこの生活に不満が無いわけじゃない。
グレた時代もあった。
しかし、幼なじみと呼べる二人の人間の温かさに触れ、今の津波がある。
そう言った意味では満足なのかもしれない。
今日も津波はすっかり上手くなってしまった料理の腕を自分の為に振るい、家事を一通りこなして日付が変わる頃には自分のベッドに入った。
朝早く、津波の部屋で動きがあった。
抜き足差し足で眠っている津波に忍び寄る1つの影。
ニシシとニヤけた笑いが聞こえてきそうな表情で、一歩一歩津波に近づいていく。
「はい、寝坊助津波はぐっすり夢の中で~す♪邪魔な目覚ましは切っちゃいましょう」
わざとらしく、それでいて小声で実況するその女は、名前を神田 瑞希と言う。
不審者というわけでも、ましてや家の住人でもない、念のため。
では、なぜそんな人物が津波の寝顔にニヘラしているかというと……、
「ふひひ……、これは激辛のハバネロエキスで~す。これを寝ている津波の口の中に入れたら……いししし♪」
という、ある意味犯罪な理由だ。
前言撤回、不審者には違いない。
スポイトに入った真っ赤な液体を何の躊躇いもなく瑞希は津波のくちもとに移動させた。
「ショータイムッ♪」
スポイトを思いっきり摘まんで一気に中身を噴射。
目標の口にすべて飲み込まれていった。
その後、すぐに「ぎゃぁぁっ」と耳を塞ぎたくなるような悲鳴が家の中に響いたのだった。
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