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「じゃあな、瑞希」
津波たちは瑞希と教室の前で別れる。
実は瑞希だけ違うクラスなのだ。
4月頃はそれでずっと瑞希の機嫌が悪かったが、今は落ち着いている。
「あ、ちょっと待って津波」
すぐに教室に入ろうとした津波を瑞希が呼び止めた。
「ん?」
津波が振り返る。
「今日さ、お母さんもお父さんも帰ってくるの遅いから、津波の家に行っていい?」
一歩間違えれば誤解を生むような言い方だが、これは親公認のたまにあることだ。
つまり、瑞希は津波の家にご飯を食べに行きたいと言っている。
津波はそれをよく理解しているので、普通に返事をした。
「もちろん、だけど手伝えよ?」
「わかってるわよ、じゃあ今回も買い物行く?」
「そうだな、部活終わるまで待っててくれるか?」
「いいよ♪また図書室で待ってる」
瑞希は元から上機嫌だったが、さらに上機嫌になって自分のクラスに向かった。
「ラブラブだねぇ、ツナ」
「茶化すな」
「いたっ!」
コツンと治の頭を小突いた津波。
内心、瑞希とならそんな関係になってもいいと考えていた。
「メシだぁっ!!」
昼休みのチャイムと共に立ち上がる治。
それを遠目に見ていた津波まで恥ずかしくなった。
「うるさい、治。またきつね食わされたいか」
「ちょ、そんな地獄は見たくねぇ!?」
あちこちから治を笑う声が聞こえた。
治はクラスのムードメイカーだった。
そんな楽しい雰囲気の中、扉の近くにいた女子が口を開く。
「早河くん、先輩がきてるよ」
思い当たる人物は一人しかいなかった。
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