章タイトル: 第1章 人生未体験の巻

5/38
前へ
/129ページ
次へ
夏の始まりを予感させる六月の夜風が、高見沢の純な感度をさらに高めさせてくれる。 高見沢は、「きっときっと良い事が、・・・」と自信なそうに呟き、深く息を吸い込んだ。 「それにしてもあのビルの風景って、結構イケてるで、脳に光の粒々が飛び込んで来て、病んでる脳芯をトントンと叩いてくれるような感じがするよなあ」 高見沢は、ぐっと思い切り背筋を伸ばした。 そして、いつも通りながら、こんなシチュエーション(situation : 状況)では、過去何回も繰り返して来た定番セリフが、口を突いて出て来るのである。 「明日から、また、元気、イッチョ出すか!」 このまま一生野壷の中かと、宿命さえも感じさせる、そんなどうしようもない時の流れの中で、悲しくも一人もがき脱出を試みている。 そして、突然。 高見沢は、何か不思議な光を発見した。 「一体ありゃ、・・・、何じゃらほい?」 野壷の底から天空に一条の光明を見つけたかのように、大きな声を上げるのであった。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加