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(3) 41階
「あのビルの最上階って、ヤケに神々しい光を放っとるやないか、ミステリアスな紫な色、・・・、スカイラウンジってなもんじゃないなあ、そんなものよりもっと曼陀羅華だが不可思議にぼやーとしておる、あの色気な輝きは一体何やねん、・・・、最上階に何があるんやろなあ?」
今、高見沢の心の真芯に眠っている好奇心が噴き出して来る。
こうなってくれば、どんどんと本来の高見沢に戻って行く。
要は、DNAにしっかり刻み込まれた通りの遠慮のない関西系サラリーマン、そこへと原点回帰し出すのである。
そして、恥も外聞もなく、いきなりの鬱から躁への大変心。
「ヨッシャ、気晴らしや! 今からあのビルに行って、あの紫の光は何か確かめてみるか」
関西人は、実に単純。
決断がヤケに早い。
もう会社生活の鬱陶しさ、そんなものは完全に頭から消失してしまっている。
夏の夜に飛ぶ蛾の如く、その妖艶な光の方角へと、無思考に歩き出す。
駅の混雑さをすり抜けて、十分程度足早に寄せ来る人波をアゲインストに突き進んで行ったであろうか。
その目指すビルへと辿り着いたのである。
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