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「今日のお客様は私の大好きなとっても素敵なレディーでいらっしゃいます。今一番輝いていらっしゃるピアニストの谷沢響子さんです」
私はコーヒーを飲みながら「真理子のお部屋」というテレビのトーク番組を見ていた。
司会者の鮎川真理子がゲストの名前を告げると、サロン風のスタジオセットのドアが開いて今紹介された谷沢響子が濃紺のロングドレスを着て登場した。
ダイヤのブローチがきらりと光る。
ガラスのテーブルのコーナーを挟んで鮎川真理子と今日のゲスト、谷沢響子が斜めに相対して座った。
鮎川真理子はある著名な作家の娘で、自身もエッセイストである。これ以外にも幾つかのレギュラー番組を持っているが、くるくるとよく動く目と同じように頭の回転も速く、話す言葉もウィットに富んでいる。
時にはその愛くるしい顔からは想像も出来ないような大胆な発言をして私をドキッとさせ、それが又彼女の魅力なのであった。
テレビで見る彼女はとても可愛くて、本当の年齢が五十台半ばであることを知った時、私はにわかに信じられないほど驚いた。正直なところ、それまで私は彼女をまだ四十前だとばかり思っていたのである。
今日のゲストは谷沢響子、幾つもの国際コンクールで優勝し、今や楽壇でもっとも脂ののった美貌の女流ピアニストである。
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