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「ようこそいらっしゃいました。
谷沢さんはこの番組は初めてでしたよね」
「ええ。今日はお招き頂いて有難う御座います。
この番組、いつも拝見してるんですよ」
「有難う御座います。今日はどんなお話が伺えるか楽しみです。 ところで貴女は確か広島のご出身でしたよね」
「ええ。今は世田谷ですけれど、私、広島市で生れたんです」
「そうなんですってね。それじゃあお母様は原爆に遭われたんで すね」
「ええ」
「その時お母様はお幾つでしたの」
「昭和五年生れですからまだ十五だったんです」
「十五といえば当時女学校の三年生?」
「そうなんです。母の実家は呉なんですよ。それが祖父の仕事の都合で広島市へ転居したんです。
なにしろ呉は海軍工廠も軍港もありましたでしょう。それまで広島は通り道になっただけで空襲はあっても爆撃は受けなかったものですから安心していたんです。
人間の運命って皮肉なものですね」
(母親は呉の出身だったのか。それに昭和五年生まれなら私と同い年じゃないか)
呉で生まれ育った私は、多少身近には感じたものの、その時はただ漠然とそう思っただけだった。
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