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「でも、お母様はよくご無事でしたね」
「それなんですよ。母は女子挺身隊で兵器工場へ勤めていたんですが、幸い事務の方にまわされて鉄筋の建物の中にいたので助かったんですよ」
「運がお強かったんですね」
「そうでしょうね。でも事務に回されて助かったのはクラスでは母だけだったでしょう。現場で働いていて亡くなったお友達に何だか申し訳ないような気がしたのか、当時のことはあまり話したがりませんでした」
「私も原爆資料館見ました。写真でさえあんなに酷いんですもの、現実にあんな目に遭ったら誰だって思い出したくないでしょう」
「それに、母は被爆者だから子供が産めないんじゃないかとか、産めても奇形児になるんじゃないかとか、同情と偏見の入り交じったような目で見られて随分辛い思いをしたそうです」
「私もそんなお話聞きました。さぞお辛かったでしょうね。よく解りますわ。そんな時にお父様と出会われたんですのね」
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