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「今日は雲一つない、良い天気だね」
勇気を振り絞って、絞り出した言葉は辛うじて彼女に届いてくれたようで、少し疲れの見える笑顔で振り向いてくれた。
疲れが見てとれるのはおそらく、先程まで新入生珍しさに彼女を取り囲んでいたクラスメート達に質問攻めにされていたせいだろう。
「うん。風も気持ち良いし、ぽかぽかして良い天気だね」
疲れからか僅かに陰がさした笑顔だったけれど、それは決して暗いわけではなく、しっとりとした可愛さを放っていた。
「なんだかピクニックがしたくなるよね」僕は窓の外に視線をやって「すっごい良い青空だし」
我ながらぎこちない話し方だなと思いつつも、緊張し下手をすれば閉じたっきり震わなくなりそうな喉をこじ開け、少しでも会話を続けようとしていた。
そんな僕の頑張りも空しく、彼女は俯き顔色は影に隠された。
「そう、だね」という途切れながらの一言を以て初めての会話は終了を迎えた。
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