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さて、我輩逍遥(しょうよう)がこの家に居候を決め込んでかれこれ1ヶ月がたった。
どうやら、この家のご主人の全貌や交友関係、そして日常の生活も垣間見えて来た。
この家のご主人の朝は早い。ご主人は、うずたかく本が積まれた書斎にベットを置いている。そこが書斎兼寝室である。我輩逍遥もそのベットの足元の方で遠慮なく寝ている。
「おわぁ~~~~~~~~あああ~~~」
野獣のような雄叫びの欠伸である。
「おい!逍遥まだ寝てるか、起きれ!」
でっかい声である。
「寝れるはずないじゃないか!そんなでっかい声で欠伸されたら!誰だって起きるわい!」
と我輩は、心の中で叫んでしまう。
「そうだ!逍遥!これからは、私の事を先生と呼びなさい!」
といきなりご主人は言った。
「先生!?って呼べって?何を馬鹿な事を!猫が喋れるかあ~つうの!」
と我輩は思った。
「解ったな!逍遥!」
「ニャ~~~ん」
我輩は、仕方なく返事をした。このご主人様は、我輩が人間でもあるかのように話しかける。何とも奇妙な男である。でもそう言われた以上は、これからは先生と呼ぶしかない。居候の辛い所である。
先生は、満足したように洗面所に行って、ガラガラ!とうがいをしている。
「じゃ、逍遥!散歩に出る!」
この先生は、朝の5時に起き散歩をするのが毎日の日課である。
何しろ夕べも遅くまで机で(我輩が、見るところお酒を飲んでほとんど寝てたように見えたが・・・)仕事をしてて、そのまま寝たらしく、昨日の格好のままである。ヨレヨレのズボンにヨレヨレのシャツ、それに三つ付いてるボタンも一つしかないカーデガンをひっかけ、ちびた下駄を突っ掛けガラガラと玄関を開けて散歩に出て行った。
「ああ~~行った。これでしばしの間眠れる!」
我輩は、ホットしてまた朝の眠りの続きに入った。
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