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植物は新たな生命を発芽という形で覗かせ、動物は冬という長い時間(とき)から目覚める季節、春。
俺、佐々中 真(ささなか まこと)は真新しい制服を着ていた。
制服は藍色を基調としたガウンに胸辺りにワンポイントのエンブレムが刺繍されたモノで、エンブレムは桜の花。
百円で見る桜を思い浮かべれば簡単だろうか。
それは新たに通う事になる明星学院の校章でもあった。
何故桜の花なのか。
それは今まさに通っている約60本の桜並木が理由だ。
道路を挟んで並べられた桜並木はこの町・・・・・・いやこの県でも有数の観光名所で、シンボルでもある。
明星学院はそれを校章として取り入れたという訳。
実際ここまで綺麗に咲き誇っている桜並木は見た事がない。
そんな美しい桜を見ながら歩いていると、
「よ!佐々中!」
誰かに声をかけられた。肩を叩かれたので、そちらを向くと、中学の時から見てきた顔が見えた。
「松浦か・・・・・・はぁ」
「え、何その『何だお前か』的ため息?」
今いる五月蝿い奴は松浦 暦(まつうら こよみ)。
こいつは中学入学から出会って、それからの付き合いだ。
女好きで、ちゃらちゃらとした自称ファンキー野郎。
細く、長い眉。
最近染めて、ワックスでツンツンにしたという茶色の短髪。
本人はその容姿がカッコよく、女が寄ってくれると思っているらしいが、残念ながら顔と性格が悪いおかげで、今だ彼女いない歴更新中の可哀相な奴なのである。
「・・・・・・今、俺の悪口言わなかった?」
「・・・・・・お前読心術出来たのか?マジで気持ち悪いぞ」
「出来ないよ!っていうか悪口の事否定しろ!そして気持ち悪いって言うなー!!」
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